2020年3月19日 この一月で日本、そして世界が大きく変わってしまったように感じます。しっかりと時代の流れを見据えて、出来る事を頑張りたいと思います。 先日ある有名な盆栽園に行ってきました。そこには見事な盆栽が沢山飾られています。小生、しばし時を忘れて見とれてしまいました。ふと見ると、なんだかいい感じの盆栽があるので恐る恐る値段を聞いてみました。 親方 「ああ、その盆栽ね。4000万円だよ。」 小生 「はあ????」 親方 「あっちのは1億円だよ(笑)」 小生 「・・・・」 盆栽はある程度のものになると、非常に値段が高くなります。何十万円、何百万円という値がついたものがゴロゴロあります。そこで小生聞いてみました。何故そんなに値段が高いのかという事を。 すると、親方が答えてくれました。 親方 「もちろん丹精込めて育てられたものだし、希少なものだったり、芸術的に優れたものであったりすることは間違いないけど、実はそれ以上に重要なポイントは『時間』なんだ。」 小生 「え?『時間』ですか???」 親方 「そう、『時間』。この真柏の盆栽はおそらく樹齢1000年ぐらいだ。あそこにあるのは樹齢300年くらい。小さいものでも30年、40年とたったものがある。これらのものはすぐに作ることはできない。名のある盆栽は代々受け継がれて育てられている。宮内庁には徳川家光が大切にしていた「三代将軍」といわれている名品中の名品の盆栽がある。本当に長い時間をかけて作り上げていくものなんだ。だから、盆栽を買うということは、そこまで作り上げる膨大な『時間』も一緒に買っていることになるんだよ。」 小生 「なるほど・・・・・」 小生ふと思いました。そういえば、肉用牛も同じであることを。和牛を例にとってみましょう。まずは母牛に種付けをして妊娠させなくてはいけません。何とか無事に受胎させて、そこから妊娠期間が285日。やっと産まれてきた子牛を約30か月かけて育てあげて、ついに肉牛として出荷ができるようになります。母牛が受胎してから、ざっと1200日。つまり3年以上の月日がすぎています。一頭の子牛が生まれてから肉牛として商品になるまでに長い時間がかかっています。この間、物凄い量の手間ひまがかかっていますし、もちろん経費もどっさりかかっています。 他の農作物も同じです。必ず『時間』というものをかけなくては成り立ちません。工業製品であれば、24時間体制で工場を稼働させていけば短期間に物を作り上げることができるかもしれません。しかし、例えば妊娠している母牛に徹夜で頑張って妊娠期間30日で元気な子牛を生んでくれといっても不可能です。野菜の種をまいて、翌日に収穫することはできません。生命が育つのには、必ずある一定の『時間』が必要になります。盆栽を見ながら、農畜産物の『時間』という概念と『資本主義』というものの関係を考えてしまいました。何とかうまく経済が回ってくれることを祈るばかりです。 前の記事 第609話:オーストラリア肉牛産業事情視察 その15 | 次の記事 第611話:畜舎環境中の病原性微生物 |