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松本大策のコラム
子牛が息をしてない!!

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2020年3月9日

 コロナウイルスが治まる気配がありませんね。早く治まってくれないと給食の牛乳や野菜だって行き先を失います(僕の子供の頃は、インフルエンザとかで学級閉鎖になっても地域ごとに牛乳とかパンを配ってましたけど、ダメなのかな?もちろん人間の配食を防いでの受け渡しですけど)。
 だいたい、学校を休校にすることが、果たして本当の意味でコロナウイルス感染拡大防止に役に立つのかの専門家委員会の意見も聞いていませんよね。僕は、抵抗力の強い子供を休ませることで、かえって抵抗力のない大人や看護および介護をする人たちの疲弊を招き、かえってリスクになると思うのですが。

 ま、そちらは専門家にお任せするとして、今日は難産にまつわるお話です。繁殖農家のみなさんは、少なからず難産のご経験はあると思います。その際に、せっかく産ませた子牛が呼吸をしていない、いわゆる「仮死状態」で生まれた経験もある方がいらっしゃるでしょう。
 このとき、まずやらなければならないのは、逆さづりにして気道の胎水を取り除いてあげることです。これを省略して人工呼吸をしても効果がありません。また、ときどき見かけるのですが、いきなり呼吸興奮剤を打っている方がいらっしゃいます。でも、これは本当に危険な行為です。「テラプチクを打ったけど、ダメだった」という声をたまに耳にしますが、「呼吸」というのは、漢字と違って「息を吸う」ことから始まります。気道の胎水を除去せずに、いきなり呼吸興奮剤を打って息を吸い込ませると、胎水が肺の細い気管まで吸い込まれて、気道をふさいでしまうのです。これでは、赤ちゃんが必死で息をしたくても空気を吸い込むことが出来ません。

 まずは、必ず胎水を除去すること。つぎに首を伸ばして気道を確保すること、そして子牛を仰向けに寝かせて前足を左右に開いてあげる形で人工呼吸してあげる。こういう順番を守ってください。ときどき、気管の細い部分が張り付いて膨らまないビニール袋のようにピタッとくっついて、このタイプの人工呼吸では空気を吸い込ませてあげられない場合があります。このときは、子牛の片方の鼻の孔を押さえて、もう片方から自分の口をつけて息を吹き込んであげてみてください。これで助けた子も沢山います(今は、農場では決してマスクを外さないので人にやってもらいますが...)。

 これだけやってダメなときに、初めて呼吸興奮剤を使えばよいのです。てきぱきと進めれば、決して手遅れにならず、逆に「お節介してとどめを刺す」リスクを回避できるのです。

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