(有)シェパード[中央家畜診療所]がおくる松本大策のサイト
蓮沼浩のコラム
第608話:オーストラリア肉牛産業事情視察 その14

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2020年3月5日

 新型コロナウイルスの情報を獣医師の視点から考えてみると「???」ばかりになってしまい、今の状況がサッパリよくわかりません。限定的な情報だけで判断することは「限定合理的判断」という状態になってしまうので気をつけたいと思います。

 今まで色々とオーストラリアについてお話ししてきましたが、ここにきて非常に重要な事を紹介し忘れていることに気が付きましたので、今回はそのことについて紹介しようと思います。ちょっと数字が多くなるので、ざっくり読んでくださいね!

 オーストラリアには2018年のデータで肉用牛は約2,640万頭います。世界の中で約2%を占めているそうです。日本の肉用牛の頭数が約251万頭ですから、10倍以上の頭数になります。ちなみにオーストラリアの人口は約2,400万人ですから、人よりも肉用牛の方が多いことになりますね。経営体数は45,921。日本は約48,300です。こちらは日本の方が少し多いですね。まあ、それだけオーストラリアの牧場の規模がデカいということになります。
 
 今回お邪魔したクイーンズランド州はオーストラリアの中でも一番の肉用牛生産地帯です。オーストラリア全土の肉用牛の約53%がこのクイーンズランド州にいます。この州にはAgForce(アグフォース)いう農業団体があり、352万頭の肉用牛を扱っています。この一つの団体だけでも日本の総頭数を上回っています。

 肉用牛の種類はヘレフォード、ブラーマン、アンガスが中心であり、これらと比べると和牛などほとんど無いに等しいレベルです。和牛とアンガスの交雑種であるWAGYUはもう少し多いかもしれません。残念ながら正確な頭数はわかりませんでした。
 
 オーストラリア国内の牛肉生産量は約224万トン。GDPの約1.6%を占めています。日本の牛肉生産量は約35万トンなのでもちろんオーストラリアに比べて少ないのですが、頭数程の開きはありません。理由のひとつとして、オーストラリアが肉牛の生体輸出を積極的におこなっていることがあげられます。年間約110万頭の生体を輸出しているそうです。農場やAgForceの方の話では今は生体で輸出した方が儲かるとのことでした。ちなみに日本への生体での年間輸出頭数は約1万頭。意外と牛肉としてだけでなく、生体としてオーストラリアから牛が入ってきています。

 オーストラリアは生産した牛肉の71%を輸出しています。輸出先の国の数は78ヶ国以上。結構輸出先の国は多いです。そして、オーストラリアの牛肉の輸出先の1位はダントツで日本になります。ちなみに2位はアメリカ合衆国、3位韓国、4位中国、5位インドネシアになります。

 ある農場でお聞きした話では、これから「オーストラリアの肉牛の生体を今まで以上に輸入したい思惑」がある国があり、そこの国のお役人さんからもっとオーストラリアの検疫施設の規模を大きくしてくれとの依頼があったそうです。ちなみにその国は日本だとのことでしたが、真偽のほどはわかりません。
 
 
今週の動画
 「 (有)シェパードの紹介 Introduction to the Shepherd Central Livestock Clinic 」

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