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池田哲平のコラム
「牛の解剖72: GALT(1) ~腸管関連リンパ組織~」

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2011年2月18日

 腸管というのは、同じ管でも血管やリンパ管と違って外界(体外)と繋がっています。ということは、常に外からの侵入者(細菌やウイルス)が体の内部に入ってくる危険性があるということです。動物としては、こういったリスクがある場所にはリスクを防ぐ仕組みを作っておかなければなりません。
 小腸(空腸・回腸)から盲腸にかけては、腸管免疫の中心を担う“リンパ小節”という組織が腸の粘膜内に散在しています。回腸から盲腸にかけては、リンパ小節がいくつも集まっていて(集合リンパ小節)、中には肉眼的にも粘膜上に板状に盛り上がって見えるほどになります。これをパイエル板と言います。外敵の侵入を察知すると、リンパ小節では免疫担当細胞であるB細胞が抗体と呼ばれるカラーボールの様なものを侵入者にくっつけて、他の白血球がこれを目印にすることで侵入者をやっつけやすくします。
 このように、腸管には外敵からの侵入を防ぐ優れた免疫機構が存在していて、各リンパ小節やパイエル板を含めてGALT(gut associated lymphoid tissue:腸管関連リンパ組織)と呼ばれています。GALTは各種の哺乳類に見られる免疫組織ですが、反芻動物の場合は他の動物と違ってちょっと特殊、というより重要な場所なのです(つづく・・・)。
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