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池田哲平のコラム
「牛の解剖73: GALT(2) ~ウシの免疫の重要組織~」

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2011年2月25日

 免疫担当細胞の一つであるB細胞(Bリンパ球ともいう)は、体の中の決まった場所で分化・成熟していき、最終的に抗体を作ることが出来るようになります。細胞が出来たてほやほやの時はまだまだ未熟で抗体を作ることはできず、最前線では使い物にならないんですね。例えるなら、訓練場で充分に訓練を受けて一人前と認められたB細胞から順に、最前線に配備されて出番を待つ、という感じです。ヒトを含めた多くの哺乳類の場合、B細胞の分化は“骨髄”で行われ、その後で各リンパ節に送られます。
 しかし、反芻動物の場合、B細胞の分化は骨髄ではほとんど行われません。じゃぁどこでB細胞たちは一人前になるのかというと、それがGALTなのです。反芻動物ではGALTがB細胞分化の場となっているのです。ヒツジを使った実験では、出生直後にパイエル板を摘出すると、生涯にわたって重度の免疫不全に陥ることが分かっています。また子牛では、GALTが腸管のみならず全身の免疫系に非常に重要であり、GALTの機能低下が全身の免疫力低下に直結すると言われています。

 子牛のおなかが冷えるとGALTの活性も低下し、全身の免疫力が低下します。最近少し暖かくなってきましたが、子牛がいる部屋の牛床はいつもフカフカで暖かい状態にしてあげたいものです。

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