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笹崎直哉のコラム
症例紹介~膝瘤~その3

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2020年2月18日

 今回、膝瘤の摘出手術で一番集中すべきポイントはどこでしょうか?
もちろん嚢胞をどうやって取り除いていくかですよね。

 実際に切皮し、ついにターゲットを発見。さあどんな作戦で挑みましょう。「関節包がすぐそばにある」ので慎重に進めていかねばなりません。むやみに組織を傷つけて、関節内まで切ってしまったら大変なことです。そこで今回はカーゼ、ペアン鉗子、そして己の指先を頼りにした方法で進めました。この方法を鈍性剥離と呼びます。

 これはメスやハサミなどの鋭利な刃物で切開するのではなく、本来は血管や組織を挟むためのペアン鉗子や、指などを使って押し広げながら嚢胞とその周囲に付着した組織を分離していく方法です。メスで皮膚を切開した後、皮下脂肪を開いたり、血管の周辺の組織を開くときによく使われる方法です。この方法には大きなメリットがあります。それは組織を裂いていく感じなので、余計に組織を傷つけないこと。さらに血管を破る危険性も低いので出血が少ないことです。少し具体的な話をしていきましょう。ペアン鉗子の場合、このように扱います。はじめは難しいですが、慣れればスムーズにできるようになります。

 またカーゼは手術に欠かせない必需品です。臓器を保持するときをイメージしてください。手だけではつかみ難く、特に血液や脂肪が付着していると滑ってしまいます。でもカーゼを介せば難なく保持することができます。また指先で鈍性剥離するときはカーゼを巻き込んであげると、非常にやりやすくなります。

 次回はいよいよ最終回です。

つづく

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