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原田みずきのコラム
角の話①

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2020年2月7日

先日、診療車のジムニーちゃんの車内を片付けていたときのことです。ガラクタやらハエの死骸やらを捨てていると、奥の方から不穏な雰囲気のビニール袋が出てきました。

恐る恐る中を確認すると、除角した牛の角が入っていました。角の形が左右対称でいい感じ(?)だったので持って帰ってきたのを忘れて放置していたようです。除角したのいつだったっけ・・・。

中にカビらしきものが生えているのは措いておいて、牛の角の断面は二層に分かれているのがよくわかります。牛の角は二層構造になっており、内側の白い部分は骨の一部、外側の黒っぽい部分は皮膚が硬く角質化したものになります。内側の骨は頭蓋骨の前頭骨から伸びています。また、内側の骨の部分を「角突起」、外側の角質の部分を「角鞘」と呼びます。角突起や角鞘の真皮部には血管が走行しているため、除角や事故などで角が折れると出血します。また、角を握るとほんのり温かいのも血管が走行しているためです。

角は生後6ヶ月を過ぎると、頭蓋骨に近い側から中が空洞になっていきます。これは前頭洞(前頭骨の内側にある空洞)がだんだんと角突起の内部に侵入することで起こります。これを「角突起の含気骨化」と呼びます。含気骨化は角全体が空洞になるまでゆっくりと続くため、成牛の角が根本付近で折れてしまうと前頭洞が露出してしまうことがあります。恐ろしいですね。
次回からは角関係の病気の話をしていきます。

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