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原田みずきのコラム
牛と鼻水③

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2020年1月31日

前回のコラムでは鼻水の役割についてお話しました。簡単におさらいすると、鼻水には吸気を肺に優しい温度や湿度にしたり、病原体を絡め取って肺に侵入しないようにする働きがあるというお話でした。また、健康なときに分泌される鼻水の量は、喉に流れ込む量とバランスが取れていて、鼻を垂らすことはほとんどないという話でしたね。
今回のコラムでは、鼻を垂らしているときの体内での変化とその原因についてお話していきます。

鼻を垂らす原因は大きく分けて3つあります。

① 病原体によるもの(風邪・肺炎)
鼻粘膜にウイルスや細菌などの病原体が付着すると、その刺激が脳まで伝わり、病原体を排除するために鼻水を増産するよう指令が出ます。その結果、大量の鼻水が作られて鼻腔から溢れ出し、鼻が垂れます。

② アレルギーによるもの
鼻粘膜に花粉や埃、動物の毛など、アレルギーを引き起こす物質(アレルゲン)が付着したときに起こります。鼻を垂らすまでの機序は①と同じです。

③ その他の刺激によるもの
気候の変化、温度差の激しい環境、刺激性の臭いなどで鼻粘膜の自律神経バランスが崩れたときに起こります。病原体やアレルギーが原因ではない鼻炎の総称で、血管運動性鼻炎と呼ばれます。最近話題になった「寒暖差アレルギー」もこの鼻炎の一種です。ラーメンを食べているときに鼻が垂れてくるのもこの鼻炎に分類されます。鼻を垂らすまでの機序は①と同じです。

このように、鼻を垂らす原因は多岐にわたります。では、呼吸器症状が出ていないのに鼻を垂らしている牛さんは、何が原因なのでしょうか。牛に花粉症のようなアレルギーがあるのかはわかりませんが、おそらく気温差や刺激性の臭いによるものだと考えられます。
牛が鼻を垂らしていて獣医に肺雑音がないと言われた場合、牛舎のアンモニア臭がきつくないか?外気温の影響をダイレクトに受けていないか?など、牛舎環境の見直しをしてみてあげてください。

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