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池田哲平のコラム
「牛の解剖61: 第四胃(5) ~哺乳期のメイン~」

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2010年11月12日

 ピノサイトーシスが終了するのとほぼ時を同じくして、第四胃は本来の機能を発揮し始めます。つまり、胃酸(塩酸)と消化酵素(哺乳期は主にキモシン)が分泌され始め、常乳(初乳以外の普通のミルク)を消化できるようになります。哺乳期の仔牛にとってミルクは唯一無二の食事と言っても過言ではありませんから、第四胃でミルクをしっかり消化して、腸管で吸収されなければいけません。この時期の第四胃と言うのは仔牛にとって最も重要な臓器の一つなのです。
 そのため、仔牛の第四胃というのは生まれてすぐにも関わらず、かなり発達したものになっています。具体的には、生後すぐの新生子の第四胃の容積は、その時で既に成体の第四胃の60%ほどもあります。あの小さな体の中に、大人のウシの半分以上にもなる第四胃が入っているのは驚きです。加えて、機能的にも腺分泌はすでに成牛並みにしっかりと行われます。
 ちなみに、新生子の第一胃は成牛の数%程しかありません。しかし、その後の第一胃の発達スピードは目覚ましく、生後8週で第四胃よりも大きくなると言われています!
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