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戸田克樹のコラム
第271話「牛の目薬②」

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2020年2月5日

この写真のように、目ヤニや膿がひどい状態では薬をいくら点眼しても効果は期待できません。有機物で薬の作用は一気に弱まってしまうからです。細菌は自分たちを守るために膿を大量に分泌し周囲をガードします。その膿汁に薬をちょっとかけても、肝心は細菌には届かず、せっかくの処置も無意味になってしまいます。

ステップ①まずは生理食塩水できれいに

まずは汚れをしっかりと洗い流し、薬が届きやすい状態をつくってあげましょう。洗うときには生理食塩水の使用をおすすめします。手元になければミネラルウォーターで代用してください。水道水での洗浄は絶対に避けてくださいね!消毒用に混ぜてある塩素に刺激性があり、角膜にダメージを与えます。さらに、眼球表面を保護してくれているムチン(糖とタンパク質の混じり合った粘り気のある物質)を流してしまいます。水道水で洗うことで保護成分が流れてしまっては、治癒が遅くなるだけでなく、二次感染がおこる可能性も高まります。水道水で目を洗っている方がもしいましたら、今日から目薬点眼だけに切り替えてくださいね。

薬を使わなくても、洗浄を繰り返すだけでよくなるケースもあります。抗生剤が農場にない場合は生理食塩水での洗浄だけでもやってみてください。

ただし、ここでも重要なポイントがあります。汚れをとりたい!という気持ちが強いと目をごしごし洗いたくなりますが、それもNGです。先ほど書いたように、強く洗ってしまうと眼球保護成分が流れおちてしまいます。注射ポンプなどを利用して目や周囲についた膿汁などの汚れをやさしく落としてあげましょう。

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