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戸田克樹のコラム
第270話「牛の目薬①」

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2020年1月29日

「眠たいな~。そんなときにはスッキリ爽快タイプの目薬を。この1滴で…シャキーン!!!!」というような目薬のCMって一度は目にしたことありますよね。

人間には身近な目薬ですが、牛さんでも意外と目薬を使う機会は多いです。
イヌやネコを飼っていらっしゃる方は動物病院で処方されてもらったことがある方もいらっしゃるかもしれません。いろいろな目薬がありますが、充血を抑えるエフェドリン(交感神経を刺激することで血管収縮を促します)や非ステロイド系の抗炎症成分が入ったものなどいろいろな種類がありますよね。もちろん細菌感染による結膜炎で処方されるような抗菌薬入りの目薬もあります。

牛だって目の病気にかかることはあります。

突起物などで目を傷つけてしまって起こる外傷性のものや細菌感染によっておこる角膜炎や結膜炎があります。また、吸血昆虫に刺されたり、アレルギー症状が出たりして瞼が腫れるケースもありますね。瞼の腫れや結膜炎については抗炎症剤の投与で落ち着くことが多いですね。細菌感染を疑う場合は抗生剤も併せて投与する必要があります。

しかし、角膜には血管がありません(コンタクトレンズを使用している方であればご存知でしょうが、角膜に血管が侵入している状態は角膜パンヌスという立派な病的な状態です。角膜に酸素が足りない状態が続いたことで、酸素を求めた角膜が周囲にある毛細血管を引き込んでしまった状態です)。

血管を介して薬剤は組織に届いてくれるので、その道路である血管がないとは…。
そうなると角膜にはなかなか薬が届きません。そこで登場するのが点眼薬なのです。

点眼薬だけで症状が大きく改善することも多く、角膜の病気に限って言えば、筋注などの全身投与がなくても治癒できるケースが多いです。牛の世界では残念ながら専用の目薬は作られていません。普段使用している抗生剤を代用していらっしゃるケースが多いかもしれません。 
            
次回、「点眼ってどうやるの?」につづく。

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