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池田哲平のコラム
「牛の解剖53: 第二胃(4) ~ウシはおっちょこちょい~」

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2010年9月17日

 では逆に、食道出口すぐに第二胃があるデメリットとはなんでしょう。
 最もよくある話で、かつ被害も大きいのが、金属製の異物を飲み込んでしまい、それが第二胃で傷害を起こすということでしょう。
 ウシはとても不注意な動物で、餌を食べるときによく異物を一緒に飲みこんでしまいます。乾草や藁を縛っていたビニール紐や飼料袋の一部などならまだかわいいもので、そのまま糞便と一緒に出てくる時も多いのですが、厄介なのが、針金や釘などの金属製の異物です。これらは、昔ながらの木造の牛舎だと特にですが、柱を固定するのに使われたりしていて、牛舎内の至る所に存在するものです。このような金属異物と言うのは第二胃に集まる傾向が強く、それらが第二胃の収縮によって胃壁を貫通し、様々な傷害を引き起こします。第二胃の近くには脾臓・肝臓・横隔膜、さらには心臓と言った大切な臓器がいくつもあります。第二胃壁を突き破った鋭利な金属は、時にはこれらの臓器にも傷害を与え、最悪の場合、命の危機に陥ることもあります。
 このような事態を防ぐためにも、金属異物を飲み込んだ可能性が考えられるような時(持続的な発熱、もしくは発熱を繰り返す、長期間の食欲不振、など)には、獣医療用の磁石を投与するなどして、金属異物を磁石にひっ付けて動かなくすることが大切です。私たちが往診する農家さん、特に生産農家さんでは、生産母牛には予防的に全頭磁石を飲ませることをお勧めしています。
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