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池田哲平のコラム
「牛の解剖52: 第二胃(3) ~早く水を吸収したい!~」

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2010年9月10日

 第一胃をバイパスするのに大きく貢献している第二胃溝反射ですが、実はウシの成長と共に少しずつ働きが弱くなり、反射活動は減少します。第二胃溝反射の本来の目的は、ミルクが第一胃に入って異常発酵することを防ぐためなので、当然、ミルクを飲まなくなってくるとその機能は必要ないとも考えられます。
 しかし、ウシがある程度成長した後もわずかながら第二胃溝反射は起きます。さらに、第二胃溝反射は特定のホルモンの作用によって刺激されることが最近分かってきていて、この事が成熟動物においても有益に働いていると考えられています。どういったものかと言うと、動物が暑熱ストレスや長時間飲水できない状況に置かれて脱水の状態になると、体が「なるべく水分を体の外に出さないでおこう」と考えて、おしっこを作らなくするホルモン(ADHと言います)が出ます。近年、このADHによって第二胃溝反射が刺激されることが知られています。この効果で、水が欠乏していて渇きを訴えている動物が水を飲むとき、水は第一胃をバイパスして、最も素早く水分を吸収できる器官である小腸により早く到達できるということです。
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