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戸田克樹のコラム
第268話「菌と牛―その③―」

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2020年1月15日

近頃は善玉菌や悪玉菌といった分類が避けられているようです。いわゆる善玉菌として分類されてきた種類のものでも実は炎症を引き起こすような成分を産生するものがいたり、悪玉菌とされてきたものでも体に良い成分を産生するものがいたり、多数存在している腸内細菌をそう簡単に分類できないことが分かってきました。

それでもビフィズス菌や乳酸菌が体に良い作用をもたらすことは現在でも変わらない事実なようです。牛の世界で身近な乳酸菌製品といえばビオスリーですね。ビオスリーだけを例にとっても、「導入初期に便性状が悪かった子牛の発育遅延を予防できた(矢田谷 2010)」、「肥育牛の肝機能障害の予防や増体の向上につながった(一条 2010)」、「乳牛のサルモネラ対策での効果があった(福田ら 2016)」と、いくつもの報告があります。

乳酸菌は文字通り、腸管に流れてきた食べ物を利用してエネルギーを得る際に「乳酸」を産生する菌の総称です(ビフィズス菌は乳酸だけでなく酢酸も産生します)。この乳酸が腸管内の酸性度をいい塩梅に高めてくれるので、その結果、酸に弱い病原性大腸菌やウェルシュ菌といった毒素を発生する菌の活動を弱めてくれるのです。

免疫機能を活性化するという報告も出されているので、腸内細菌が体に与える影響はすさまじいものがありそうです。今まさに熱心な研究がおこなわれている最中です。これから新しいことが次々に出てきそうですね。

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