(有)シェパード[中央家畜診療所]がおくる松本大策のサイト
池田哲平のコラム
「牛の解剖44: 食道(4) ~仔牛の食道は未発達~」

コラム一覧に戻る

2010年7月9日

 反芻は反芻獣独特の食物消化行動の一つです。ですが、しっかりとした反芻が出来るためには、しっかりとした消化管の発達が必要不可欠です。仔牛は成牛と比べてあらゆる器官が未発達ですが、食道もその一つです。
 食道の粘膜からは粘液が分泌されていて、食塊がスムーズに運ばれるのをサポートしますが、仔牛ではこの粘液の分泌量がまだまだ少ないです。加えて、食道の筋肉の働きも成牛に比べると弱いです。ミルクを飲んでいる時や、スターターの様に小さな粒状の食べ物だと大きな問題はないのですが、粗剛性の高い粗飼料を仔牛が大量に食べてしまうと、食道の働きが未発達なために、のどや食道に食塊を詰まらせてしまうことがあります。水を飲むことや時間が経つことで自然に下流に流れることが多いのですが、最悪の場合死にいたることもあります。仔牛もバカではないので、長くて硬い粗飼料を何も考えずにこれでもかと食べることは稀ですが、母牛の食べるような粗飼料を一緒にムシャムシャしているような仔牛では、少し注意が必要です。
|