(有)シェパード[中央家畜診療所]がおくる松本大策のサイト
戸田克樹のコラム
第266話「菌と牛―その②―」

コラム一覧に戻る

2019年12月25日

乳酸菌というワードをよく耳にするようになりましたが、それには近年、問題となっている薬剤耐性菌の存在が大きく影響しています。

抗生物質の発見は人類と感染症との戦いに大きな一石を投じました。大量生産も可能になったことで感染症の脅威から人類は完全に開放されたはずでした。しかし、抗生剤が効きにくい耐性菌が次々に報告されるようになり、感染症の脅威は新たなステージに移行しています。大腸菌やサルモネラといった食中毒を起こす細菌の中にも、多剤耐性といっていろいろな抗生剤を使っても倒すことができない強力な種類が存在しています。2016年の伊勢志摩サミットでも議題に上がったことも記憶に新しいですが、世界的な関心は年々高まっていますね。

厚労省のホームページ上にも耐性菌に関する報告はいくつも掲載されているのですが、大腸菌に対する薬効が年々薄くなっている(耐性化がすすんでいる)抗生剤の報告や、よくメディアでも目にするMRSA(メチシリン耐性ブドウ球菌)の分離割合(検出されたブドウ球菌のうち、MRSAが何パーセント含まれているか)が50%近くもある現状など、楽観できない報告もいくつか掲載されています(https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000571553.pdf参照)。

新しい抗生剤を発明しても結局すぐに耐性菌が出現する、というイタチゴッコを終わらせるために不必要な抗生剤の使用はNO!という考えが世界の目指す方向であるようです。

乳酸菌などのいわゆる善玉菌に対して積極的な研究が進められているのは、病気の治療や予防に対して抗生剤の代役としての機能を担ってほしいからです。ちなみにこうした善玉菌はプロバイオティクスと呼ばれています。抗菌薬を意味するアンチバイオティクスに対する言葉として作られたもので、「適切な量を経口摂取することで宿主の健康に好適な影響をもたらす生きた微生物」を意味しています(WHO定義)。

実際、いわゆる善玉菌を摂取することで体にとっていいことが起こる!ということが数多く報告されています。なぜ体にいいことが起こるのか、続きはまた次回へ…。

|