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池田哲平のコラム
牛の解剖35:歯(5) ~歯茎にできる厄介者~

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2010年4月2日

 そうして歯の中をのぞいてみると、歯が抜けていたり、丁度生え換わりの途中であったりすることがあります。ただそれだけであれば、しばらくするとウシもその違和感に慣れ元通り餌をがつがつ食べるのですが、時に厄介なものが見つかる時があります。皆さんは歯の根元がプクーッと赤く腫れ上がっているのを見たことがありますか?左の写真の症例1は歯肉炎の一種で、
歯肉腫もしくはエプーリスといいます。これは歯肉への慢性的な機械的刺激(何か固いものが挟まっていたる、永久歯の異常な萌出など)によって組織が異常に増生した腫瘤のことです。ずーっと大きさが変わらなかったり何もしなくても勝手に治まったりする場合もあるのですが、ひどい場合には症例2の様に歯並びを著しく変えてしまい採食性に大きな影響を与えてしまします。内科的に消炎剤や抗生剤を投与しても腫瘤への直接的効果はほとんどなく、ウシの場合は経済性と術後管理の難しさから外科的切除も困難です(人や小動物では外科的切除が第一選択の様です)。私個人の考えでは、違和感がありながらも餌を食べてくれるうちはまだいいのですが、増体が望めないほど採食性が落ちるようになった場合は治療の対象とせず出荷するのが現実的だと思っています。
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