(有)シェパード[中央家畜診療所]がおくる松本大策のサイト
蓮沼浩のコラム
第593話:言葉のイメージ

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2019年11月14日

 先日子供のスポーツ少年団の会合で泥酔し、子供と父兄の前で醜態をさらす。カミさん超激怒。まだ怒っています。やらかしました。飲み会の多い季節となってきました。本当に泥酔には要注意です。怖い・・・・。
 
 
 新聞を読んでいたらある記事に目がとまりました。

 豚コレラ呼称「CSF」に 農林水産省 風評被害対策で変更
 人がかかり、豚コレラとは別の病気のコレラを連想し、豚肉の風評被害につながるのを避けるのが狙い(南日本新聞11月12日より)。

 「コレラ」という言葉の持つ負のイメージはやはり相当強いものがあります。豚コレラは人間のコレラとは全く異なります。全然違うものですし、人に感染などしません。豚コレラに感染した豚の肉を食べても、人の健康に影響はありません。しかし、この「コレラ」という言葉があることで誤解を招いてしまう可能性があります。風評被害を絶対に避けなければいけない中での今回の措置になります。

 本当に言葉のイメージは小生が思っている以上に大きいです。国家が呼び方を変えるという事は、それだけ影響が大きいことがわかっているのでしょう。本質は何も変わっていなくても、言葉が変わることで受ける印象は全く異なります。昔は「全滅」→「玉砕」、「退却」→「転進」など強烈なものがありました。畜産の世界では「狂牛病」が出たときはBSEになり、「牛白血病」はBLV、「口蹄疫」はFMD。高病原性鳥インフルエンザはHPAI。そしてアフリカ豚コレラはASFで今回の豚コレラがCSF。

 BSE
 BLV
 FMD
 HPAI
 ASF
 CSF

 この略号だけ見たら、一般の方はおそらく何のことかはさっぱりわからないでしょう。獣医さんでも出来たてホヤホヤのCSFを聞かれてすぐにわかる人は少ないのでは?試しにカミさんにこの略号を全部書いて見せてみました。

 「これ、英語でしょ!」←そりゃそうだけど、小生絶句しました。
 「え、何??暗号???」←まあ、ありがちな回答ですね。

 と、まあこんな感じでした。さすがにBSEぐらいわかるかと思ったのですが、全くわかっていませんでした。呼称の変更は大本の存在の片鱗すら予測することを困難にします。どの動物の病気かもわからなくなります。ASF、CSF、FMDが豚の病気、BLV、FMD、BSEが牛の病気、HPAIが鶏の病気だとすぐにわかる一般の人はほとんどいないと思います。さすがです。効果抜群です。ただ・・・非常に怖い事でもあります・・・。言葉を変えるだけで、ヒト様の認識を変えることができてしまうのですから・・・。

 さらにちょっと小生がこれらの呼称を使って伝染病に関する作文を作ってみました。

 「日本ではBSEは落ち着いたが、CSFやBLVが現在大きな問題となり、さらにFMD、ASF、HPAIの脅威に常にさらされている。防疫体制の強化は急務であろう」

 何だかよくわかるような、よくわからんような文章ですね・・・。

 言葉の威力は本当にすごいものがあります。色々なところで慎重に使っていかなくてはいけないと改めて思いました。

今週の動画
「牛の口の開け方 How to open the mouth of a cow」

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