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池田哲平のコラム
牛の解剖33:歯(3) ~上顎の丈夫なクッション~

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2010年3月20日

 前回お話しした通り、ウシの下顎には切歯が3本、犬歯が1本ありますが、反対に上顎には切歯も犬歯もありません。つまり一般的に前歯として認識されている歯は、ウシの場合は下顎にしかないのです。では、上顎の本来歯がある部分はどうなっているのでしょうか?また、こんなアンバランスな上下の歯の並びをしているウシはどうやって草などの食物を切って食べているのでしょうか?
 ウシの下顎の切歯が上顎に当たる部分には、歯の代わりに“歯床板(ししょうばん)”と呼ばれるものがあります。左右対称で三日月の形に似た丈夫な表面をした構造物です。牛が草を食べるときには、舌を上手に使って草を口の中に引き込んだあと、この歯床板に草を押し当てて切歯で切断する、というようにしています。イメージとしては、まな板の上で包丁を使って食べ物を切る、といった感じでしょうか(上下逆ですが…)。まぁ、歯床板はまな板ほど硬くはなく、指で押してみると適度に柔らかくクッション性のある組織ではあります。指で押してみる方は、下顎の切歯との間に挟まれないように注意してください。歯床板が柔らかいクッションみたいだとは言え、やっぱり痛いです。。。
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