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池田哲平のコラム
牛の解剖27:舌1 ~食物をつかみ取るスペシャリスト~

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2010年1月30日

 では口の中の具体的な消化器官を見ていきたいと思います。そのスタートはまず舌です。
 動物が採食するには当然食べ物を口に運ばなくてはいけません。その方法には色々あり、口(というより頭)を動かし歯から直接かぶりつくもの(肉食獣)、上下の唇を使い口の中に運ぶもの(ウマ)、器用に手を使って食べるもの(サルの仲間やアライグマ)など様々です。食べた物は口の中で舌によってうまく歯に運ばれて咀嚼され、唾液と絶妙に混和されて消化されていきます。舌は消化器としてとても重要な役割を果たしています。
 ですがウシで特筆したいのは、上で言ったような口の中での役割ではなく、口の外での役割です。ウシは採食の際に舌をとてもうまく使って食べ物を口の中に運びます。舌で飼料や牧草を巻き取るように口に運んでいるのを皆さん見たことがあると思いますが、あんな器用なことができる動物は珍しいです。たとえば牧草地で、ウシでは約1cmの長さまで牧草を食べることができますが、ウマは約2cmまでしか食べられないと言います。この差はうまく舌を使って採食できているかの差だと言われています。
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