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戸田克樹のコラム
第256話「たまには表示を見てみよう②~ゲゲゲ!劇薬!?その2~」

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2019年10月16日

シェパードでは獣医師を募集しています
 シェパードでは、関東地区の獣医療が不足している地域を支援するため、栃木県那須塩原市に支所を設けることにいたしました。2020年の4月に開設する予定です。経験、未経験は問いません。シェパードで研修後、現地勤務となります。募集内容は こちら から。

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先週の新幹線はその後、たくさんのビジターで埋め尽くされました。自由席の乗車率は100%を超え立ち客でいっぱい。これだけの観光客を熊本に集めるとは、スポーツの力はすごいです。まさかの8強入りとなり、ラグビー熱はまだ冷めることはなさそうですね。

さて、「劇薬」と書いていながらなぜ安全なのかを今回は考えてみます。
ネオアスを例に考えてみます。ネオアスにはスルピリンという解熱作用のある成分が含まれており、それが劇薬指定を受けている成分になります。

効能または効果の欄には、「牛・馬・豚・犬・猫:感冒、肺炎、気管支炎などの解熱、鎮痛、去痰」と書いてあります。非常に幅広い動物に使用することができ、去痰効果があるのは嬉しいところです。

次に投与量を見てみます。
「1回体重1kgあたり、0.02~0.05mlを1日1~3回、皮下、筋肉、または静脈内に注射する」、というような内容が書いてあります。投与量にやや幅があること、1日に複数回投与しても大丈夫な薬剤であることが分かります。さらに、投与方法にもバリエーションがありますので、静脈注射が苦手な人でも大丈夫ですね。

もう少し読み進めていくと、注意事項も書いてあります。「定められた用法・容量を厳守すること」「肝、腎、血液に障害を有する動物に使用する場合には健康状態を考慮し、投与の適否の判断を慎重に行うこと」「スルピリン水和物は実験動物で変異原性及び催奇形作用が認められているので治療上必要な場合以外は使用しないこと」「本剤を静脈内に注射する場合には、血圧低下を起こすことがあるので、できるだけ緩徐に注入すること」など、大切なことがいくつも記載してあります。

逆を言えば、こうしたことに十分に注意して慎重に使用していれば基本的には問題がない、ということでもあります。たとえば100kgの子牛に50ml投与するとか、1日に5回注射するとか、何日も注射を続けるとか、そういうことをせず、説明書に書いてある注意点を守って適切に使用すれば、良薬になります。我々も劇薬指定を受けている薬を使用する機会は非常に多いですが、それにより発生した事故はこれまでありません。他の薬と違い、注意は必要となりますが、必要以上に薬剤に対して不安を抱く必要はありません。

なお、劇薬は法律で他のものと区別して陳列するようになっていますので、使用時だけでなく、保管の際もご注意くださいね。

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