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池田哲平のコラム
牛の解剖15: 肺(1) ~呼吸器のメイン臓器~

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2009年10月31日

 気管の先で、胸腔に入ったところにあるのが肺です。肺は血液中の酸素と二酸化炭素の交換を行う場所で、呼吸器のメインと言える臓器です。肺は体の真ん中で大きく左右2つに分かれます。そして左右の肺がそれぞれまたいくつかの塊に分かれます(この塊を「葉(よう)」と呼びます)。数多くいる家畜の中でも、牛は最もたくさんの葉に分かれている動物の一種です。
 また牛の肺のその他の特徴としては左右の大きさの差があります。哺乳類の肺はほとんどの種類で右の方がわずかに大きい程度ですが(心臓がやや左にあるため左肺は少し小さい)、牛ではそれがより顕著です。なんと右の肺は左の肺の約1.5倍もの容積があるんです!この差の要因は、体の左側に巨大に発達した第一胃(ルーメン)が存在するためだとも言われていますが、はっきりした事は分かっていません。
 ですが、牛のルーメンと肺が関係する病気は多いです。その一つに「鼓脹症」があります。いわゆる「ガスが張る」と言った状態です。鼓脹症はひどい場合には牛が死亡してしまう病気ですが、これはガスが張って拡張したルーメンによって胸腔が圧迫され、肺が充分に収縮・拡張できず呼吸困難になってしまうためです。
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