2019年9月6日
* * * * * * * * * ある日、午前中の診療を終えて事務所でお昼を食べていたときのことです。首に違和感を覚えてポリポリ掻いていると、チクッと鋭い痛みが走りました。恐る恐る掻いていた手を見ると、3mm程度のダニが足をバタつかせていました。いつから首にくっついていたのでしょう・・・。 おそらくフタトゲチマダニです。 フタトゲチマダニはヒトやイヌ、ウシなどに寄生して吸血するダニであり、主な活動期は5月から10月です。 吸血といっても蚊のように細い口吻で短時間刺すのではなく、ダニは鋏角と呼ばれる鋭い構造物で宿主の皮膚を切り裂いたあと、口下片と呼ばれる針状の構造物を皮下組織に深く差しこみ、4~10日間ほど吸血し続けます。吸血し始めてからしばらくすると、唾液腺からセメント様物質を分泌し、口下片と宿主を固定します。これにより動き回る宿主に長時間吸血することが可能になります。 ダニに吸血されているのを見つけたとき、自分でダニを引き抜いてはいけないと言われているのはこのためです。無理に引っ張るとセメント様物質で固められた口下片が皮膚に残ってしまうのです。 また、ダニの唾液腺内で病原体が増殖していることがあり、こうしたダニに吸血されることで病気が伝播されます。フタトゲチマダニはイヌやウシではピロプラズマ症、ヒトではQ熱や日本紅斑熱、ライム病、最近話題になっている重症熱性血小板減少症候群などを媒介します。 次回からはこれらの病気について説明していきたいと思います。 前の記事 子牛のこびりかた | 次の記事 牛のピロプラズマ病について |