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蓮沼浩のコラム
第582話:BRDC病原体の検査について その8

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2019年8月29日

シェパードでは獣医師を募集しています
 シェパードでは、関東地区の獣医療が不足している地域を支援するため、栃木県那須塩原市に支所を設けることにいたしました。2020年の4月に開設する予定です。経験、未経験は問いません。シェパードで研修後、現地勤務となります。募集内容は こちら から。

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 夏休みの宿題が大詰めで、家の中はしっちゃかめっちゃかになっている模様。小生は出張でずっと不在。帰ったらカミさんに何て言われるか恐ろしいです。
 
 
 小生が牛コロナウイルスと聞いて現場で連想すること。実は呼吸器病の大発生になります。下痢ではありません。糞便からは一度もないのですが、今まで小生は現場で鼻腔スワブやペア血清の検査で何度か牛コロナウイルスを検出したことがあります。その時の状況はといいますと、すべてが子牛の呼吸器病の大量発生になります。ある農場では牛RSウイルスとの混合感染で、子牛がどれも激しい呼吸器病となり、どえらく大変なことになりました。この事例ではペア血清の抗体価の変化から牛コロナウイルスが関係していたことがかなり後になって判明しています。小生の認識では牛コロナウイルスは下痢ではなくて、呼吸器病。それもかなり感染力が強く、最初は原因不明という場合がほとんどすべてです。小生がコンサルでお邪魔している牧場でも、原因不明の呼吸器病が多発し、最終的に原因が牛コロナウイルスであることがわかった事もありました。

 今回実は一農場でこの牛コロナウイルスが検出されています。ここの牧場はクリプトや牛ロタウイルスが便から検出される農場です。さらには鼻腔スワブから牛コロナウイルスまで取れました。今回の陽性率は80%なり。当然、ここの牧場の疾病発生率や事故率はかなり高い農場になります。以前から母牛に下痢五種混合ワクチンを接種しようと何度もお願いしていたのに、残念ながら実施できていませんでした。今回の結果をもとに再度説得すると、やっとワクチンプログラムを実施していただけることになりました。その結果、現在にいたるまで子牛の死亡や治療頭数は激減しています。

 牛RSウイルスに関しては人体用の検査キットを応用することですぐに結果が現場でわかります。しかし、牛コロナウイルスの鼻腔スワブの検査は今まですぐには実施できませんでした。過去のコラム(第235話)に書いているように、ペア血清を用いてかなり後になって判明するレベルです。牛コロナウイルスの陽性率が16%というデータが出ています。実は牧場で時々目にする牛RSウイルスの陽性率の2.6%よりも約6倍高い陽性率になります。小生が思っている以上に実は牛コロナウイルスによる呼吸器病は現場で広がっているかもしれませんね。

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