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池田哲平のコラム
牛の解剖7: 副鼻腔(1) ~鼻から続く頭内迷路~

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2009年9月5日

 突然ですが、皆さん牛の脳の大きさ(重さ)ってどれくらいか知っていますか?BSE問題が取りざたされていた頃に知った方もいるかも知れませんが、大体400〜500gで、人間の大人の約1/3、赤ちゃんの脳(350〜400g)より少し重いくらいしかないんです。
 じゃぁあの大きな頭の中には、他に何が入っているの?と言いますと、じつは何も入っていない空洞が非常に多くのスペースを占めているのです。その空洞を“副鼻腔”と言い、鼻から続いています。副鼻腔は「脳を入れるスペースは小さくていい反面、巨大な筋肉が付着する顔や頭の骨は大きくないといけない」という牛のアンバランスな頭の構造を作り上げるために発達しました。
 副鼻腔は牛の成長とともに発達し、巨大にかつ複雑になっていきます。成牛では頭の中を迷路のように走り、上顎から頭の上から頭の後ろ、さらには角の中にまで入り込んでいるんです!以前のコラムでお話しした甲介も、実は副鼻腔の一つです(甲介洞といいます)。
 鼻から続いている副鼻腔は、鼻の炎症が波及することもあり副鼻腔炎を起こします。ひどい場合には膿がたまって“蓄膿症”となり、重症例では顔の形が変わったり、脳を圧迫して神経症状を示すこともあります。
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