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池田哲平のコラム
牛の解剖4: 呼吸器(鼻3)

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2009年8月1日

 今日から8月ですね〜。暑い日が毎日続きますが、みなさんバテていませんか?大学の6年間を北海道で過ごした私にとっては、鹿児島の熱さは非常に辛いものがありますが。。。 牛さんたちも暑さには弱い動物です。暑い中、自分の体の恒常性を維持しようとすると、細胞では普段以上のエネルギーが必要になり、細胞の酸素要求量が増え、肺は換気のためにフル回転し、呼吸数は多い時は普段の倍以上にもなります。
そんな肺を始めとした呼吸器へ空気を送る最初の通り道として、鼻は非常に重要な役割を持っています。その役割は大きく分けると以下の3つです。
 
(1)温度調節
 鼻粘膜には血管が非常にたくさん存在していることは前回お話ししました。この血管叢(毛細血管網)に空気が触れることにより空気は温められ、気管や肺には体温と同じくらいになった温かい空気が送られます。冷たい空気というのは、その「冷たい」というだけで肺の細胞にダメージを与え、肺は肺炎などの病気にかかりやすくなります。

(2)湿度調節
 鼻粘膜からは絶えず分泌液が出ていることも前回お話ししました。このうち、漿液(水のようなさらさらした分泌物)によって空気は加湿され、湿った空気が下部呼吸器に送られます。呼吸器に限らず生体の細胞は乾燥に非常に弱いので、湿潤な状態を保つことは非常に大切なのです。

(3)異物排除
 分泌液の中には漿液と反対にちょっとドロッとした粘液という種類のものがあります。生体にとって必要でないもの(異物)である小さなゴミや細菌などは、この粘液によって捕えられます(粘液に包みこまれる)。そして、肉眼では見られない「線毛」という小さな毛の動きで、鼻の外へ外へと排除されるのです。鼻はこうして異物をシャットアウトして、きれいな空気を肺へと送るんですね。

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