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池田哲平のコラム
牛の解剖2: 呼吸器(鼻1)

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2009年7月18日

 今回から数回は、牛の呼吸器について話したいと思います。そのスタートは鼻です。
 人や小動物と比べると、牛の鼻は顔の大きさの割にとても大きいです。鼻を正面から見ると、蝶々のような形をした毛の生えていない部分が見えます。ここは一般的に「鼻鏡」と呼ばれている部分で、解剖学用語では「鼻唇平面」と言います(蛇足ですが、臨床現場での言葉と正式な解剖学用語とは結構違うことがあります!)。ここは和牛登録のための鼻紋をとることで皆さんよく知っていると思います。人の指紋と同じように、個体ごとにその紋様が違うことから個体識別に利用されているんですね。
 鼻鏡は通常、皮下の汗腺からの分泌物で湿っているので、鼻紋採取の時はタオルなどでよく拭いて水分を除いたあとにローラーで墨を付けて、船の帆のように張った形の紙に“くりん”と押し当てます。
 一方、発熱などがある場合には鼻鏡は乾いていることも多いので、鼻鏡は外貌検査の段階で牛の健康状態を把握するのに重要な観察項目にもなります。
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