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伏見康生のコラム
「NO.163 「鼻からゴッツイ膿!!その2」」

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2011年12月7日

 「これはですね、鼻環の装着時にできた傷から細菌が感染して起こる、鼻環フレグモーネです!」

 鼻腔内、時に吻部周囲の限界不明瞭な腫脹、多発性膿瘍形成をおこし、著しい混血の膿性鼻漏の排出と鼻腔狭窄、発熱等の症状を起こすこの病気を、私は勝手に鼻環フレグモーネと呼んでいます。
 フレグモーネとは簡単に説明しますと、表皮ではなくより深い真皮や脂肪織に広く細菌感染が起こる疾患です。今回の病気も症状から単純にフレグモーネという名前でいいのですが、鼻環の装着に関連して発生すること、そして他に存在する趾間フレグモーネという名前の病気に似せてつけてみたというただのシャレです・・・。

 鼻環は真皮、筋肉を貫通して装着されるので、この病気は単純な化膿症のように見えますが、粘膜下を広範に細菌が感染し非常に厄介です。治癒には数日〜10日ほどはかかり、ほうっておいても治ることはないと思われます。中には下顎までもが腫れて、膿瘍を作った子もいました。

 治療では先ず衛生面とその後の処置のしやすさから、鼻環を切ってはずしてしまいます。次にガーゼを使って鼻腔粘膜の膿疱を擦って排膿出来るものは排膿させ(大きな膿瘍という感じではないのであまり排膿しないことが多い)、プレッシャースプレーを使って鼻腔内をよく洗浄します。そしてペニシリン系、セフェム系等の抗生物質とステロイドを筋注など全身投与します。(感染症に対してステロイドを用いるのは定法ではありませんが、炎症による悪影響がステロイドの副作用によるデメリットよりも大きい場合には使うべきです。このようなフレグモーネの際には炎症の連鎖に歯止めを掛けることができますし、鼻腔の狭窄も軽減し大きな効果が得られます。)数日の投薬の後、症状は軽快していき治癒に向かいます。・・・ただし、再発が多いです。一見治ったようでも敵は粘膜の下でしぶとく生きていて、数日後に再診ということもありましたので強めに押す(治療を続ける)のがいいとおもいます。

 鼻環をつけるときには牛がバッタバッタ暴れますので、・・・「よし、しっかり抑えとけ!」ばっちーん!!「ぅん・・ンモモ〜〜っっ!!!」どたばたどたばた・・・、余裕はないかも知れませんが鼻をひと拭きして、イソジンをかけたらリスクが減るかもしれません。

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