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伏見康生のコラム
「NO.154 「SPAY 〜おなべちゃん5〜」」

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2011年9月28日

 前回までにSPAY後のメリットといえる部分を紹介してまいりましたが、SPAYに伴う失敗やリスクもお話ししておかなくてはなりません。

 一つは施術しても卵巣が残ってしまう可能性があるということ、もう一つは施術に伴い出血事故や、膀胱等の損傷をおこしてしまうリスクがあるということです。

 まず前者についてですが、卵巣が見つからなくて取れなかったというような事例はそもそも除外するとして、施術した牛で卵巣が取り出せた場合でも卵巣の一部を取り残してしまうと部分的に残った卵巣が再生することがあり、卵巣としての機能が維持する可能性があります。
 その場合には、普通の雌牛と同様に発情行動も起こりますので、SPAYは失敗。効果は期待できないと言えます。

 後者は切除機を膣から腹腔へ刺入するとき、またその後の切除をするときに起こる可能性があります。
 出血事故は卵巣とそれを繋ぐ卵管・血管を切り離すときに生じる出血が原因です。イメージは去勢処置と似ています。精巣を取るために精索と血管を切り取ると当然出血します。同様に卵巣を切除するうえでの出血はどうしても起こるため、その程度によっては牛に深刻なダメージを与えてしまうこともあります。
 また膀胱の損傷、尿管の損傷は解剖学的な位置関係を把握していれば大概は防ぐことができるはずですが、万が一傷つけてしまった際には深刻なダメージを与える可能性があります。

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