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戸田克樹のコラム
第241話「いろいろな肝臓の薬⑤~ウルソは回るよ、どこまでも~」

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2019年7月3日

最後に紹介する薬はウルソです。
注射薬も添加剤も成分は同じ「ウルソデオキシコール酸」です。

こちらの作用は胆汁の分泌をどんどん促す、という1点につきます。
胆汁には肝臓で代謝されてできた老廃物や脂肪分の分解を助けてくれる胆汁酸塩が含まれています。ウルソの作用でどんどん胆汁が出ていけば、胆のうに余裕が出てきますのでまた老廃物を貯めていくことができます。いわばごみ箱に余裕があるため、肝臓さんもどんどんごみを捨てることができる、という状態です。さらに、胆汁酸塩の作用によって、消化するのがたいへんな脂肪でさえもどんどん小さくすることができるので、消化管の負担が減るとともに、肝臓の脂肪代謝もより効率よく行えるようになります。

また、ひとつ嬉しいことにこの胆汁酸は腸管から吸収されて門脈を経由してまた肝臓に戻っていきます。肝臓に戻ってもほとんど化学変化をうけないまま、また胆汁酸塩として胆のうから消化管へ出ていき、また門脈を通って肝臓へ…と、このサイクルを延々と続けていきます。この循環には特別に「腸肝循環」という名称がついています。

添加剤だろうと、注射薬だろうと、一度からだの中に入ったらしばらくはグルグルと肝臓、胆のう、腸管の間をめぐり続けてくれるお薬なのでした。

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