SPAYについてとその手技に関して紹介してまいりましたが、コラムを読んでくださっている皆さんは処置後の雌牛はどうなるのか??という点が一番気になるのではと思います。そこで今回からは、増体、肉質の変化、発情行動の抑制等について具体的に紹介していきたいと思います。
まずは、枝重と肉質の変化について紹介いたします。
ここでは実際の摘出現場でもお世話になりましたZENOAQの大久保先生が日清製粉(株)に在籍されていたころに発表されたデータをご紹介したいと思います。インターネットで検索すれば多くの研究機関による卵巣摘出と肉質に関する試験結果が出てきますが、あまり頭数の多くない試験ばかりでしたので、確認した中で一番試験頭数の多かったこの結果を参考にお借りしました。
出荷成績①、②は試験を行った異なる2農場で、黒毛和牛の出荷成績です。数値の後ろの±○○というのは標準偏差を示すもので、簡単に説明すると同じ区の中でどれくらい数値のばらつきがあるかを示しています。
さてこれを見てみますと、数値としてはSPAYを行なったほうが枝重・肉質とも一見「良さそう」と思われる結果が見て取れます。それくらいの感覚でとらえてもよさそうなのですが、統計学的には「差が無い」という結論になります。それもまた極端に感じる結論ですが、統計学的には「差がある」「効果がある」「良くなる」等の発言を気軽にしてしまうと、ウソつき呼ばわりされますので、紹介者の私としても慎重に感想を述べなくてはいけません(笑)。よって、このデータから読み取れるのは「出荷成績を向上させる可能性が示唆される」といったところです。
掲示板にていつも話題を提供してくださるK様も膨大な頭数の卵巣摘出を行ってきたエキスパートであり、摘出牛の出荷成績のインプレッションを掲示板で述べてくださっていますので、ご参考に。