(有)シェパード[中央家畜診療所]がおくる松本大策のサイト
戸田克樹のコラム
第238話「いろいろな肝臓の薬②~1点集中パンカル注~」

コラム一覧に戻る

2019年6月12日

それでは強肝剤シリーズのはじまりです。まずは馴染み深いパンカル注のご紹介といきましょう。

近頃フォルムが変わったこちらのパンカル注はパントテン酸製剤という名の通り、「パントテン酸」に重きをおいた薬剤です。他の成分こそ入ってはいませんが、1ml中にパントテン酸を50㎎も配合している薬剤となります。ちなみにこのパントテン酸はビタミンB5の別名です。

では、ビタミンB群のひとつであるパントテン酸がなぜ強肝剤と言われるのでしょうか。
それはパントテン酸が生体内でCoA(コエー)という補酵素に変換されることに由来します。CoAはさまざまな生体内反応において補酵素としてその反応をアシストしてくれます。吸収した栄養素の再合成や解毒といった化学反応を円滑に、かつ効率よく進めるために重要な成分になるのです。

クエン酸回路というワードを聞いたことがありますか?

これは細胞がもっている代謝回路です。この反応系がぐるぐると回っていると、体が必要とするエネルギーを生み出すことができます。その様子はまるで発電機のようですね。
この反応に必須なのが、皆さんもお気づきのとおり、CoAやパントテン酸となるわけです。それに、反応に必要なこの代謝回路はいろいろな細胞が持っていますが、この回路は肝臓に集中しています。
「エネルギーを生みだし、細胞が元気になる⇒肝臓がその機能を十分に発揮できるようになる」というわけで、パンカル注は強肝剤として立派に働いてくれるわけであります。

|