先日、とはいっても半年近く前になりますが、珍しい目の病気に遭遇いたしましたので報告いたします。
写真は「水晶体脱臼」を起こした牛の右目の写真です。黒毛和牛の去勢牛で、撮影したのは導入から1週間ぐらいだったと記憶しています。市場では「何か目がおかしい」といったような発表があって、事情をわかった上で導入されたようです。
水晶体は目において、レンズとしての役割を果たしています。筋肉の動きによってその厚みを変えることで近くや遠くにピントを合わせています。
本来水晶体はチン小体によって支えられて固定されているのですが、外力(強い衝撃など)なのか、内力(緑内障など)なのか、遺伝なのか、原因はわかりませんが、水晶体は白濁し本来の位置よりも前の前眼房内に落ちてしまっています。固定されていないので首の角度を変えると、コロリ・・・と水晶体も転がって前眼房内を移動します。眼球が少し飛び出しているように見えますので、脱臼とどちらが先かはわかりませんが緑内障も併発しているようです。
教科書では読んだことがあっても実症例を見たのは初めてでした。残念ながら生産現場での治療は厳しいと思われますが、炎症を起こしているような感じはないので、元気に育っていってもらいたいものです。(おわり)