(有)シェパード[中央家畜診療所]がおくる松本大策のサイト
伏見康生のコラム
「NO.139 「走るんです!!(その2)」」

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2011年6月8日

 さて、雌牛が走る原因はなんだったのでしょうか?

 走った雌牛を注意深く観察すると・・・あっ!痛がりながらオシッコをちびちびもらしています!・・・というかオシッコをするのがすごく痛そう!!よーく観察すると、陰毛には白色の石灰のような物質の付着が。これは・・・アレだな。

 ということで、尿を採取し、尿スティック検査と尿沈渣を確認すると・・・pHは8.5を越え、潜血と尿蛋白反応。沈渣は・・・棺おけ型の結晶、すなわちストラバイト結晶(リン酸アンモニウムマグネシウム)がた〜んまり。・・・お嬢ちゃん、尿石症です。

 ここのところ、ぽぽぽぽ〜んと立て続けに3頭ほど同様の症状の雌牛が出て、何れも尿石症であったことがわかりました。ストラバイト結晶の刺激が痛くて走り回っていたんですかね〜。しかし、今回の走り回った症例はたまたまみんな尿石症でしたが中にはまったく別の原因の牛もいたかもしれません。
 尿石症といえば牛では代謝性尿結石が有名ですが、細菌性膀胱炎にかかるとウレアーゼ産生菌の働きで尿素→アンモニアの反応が進み、pHが上昇してストラバイト結晶を形成するという感染性尿結石というタイプも存在します。今回の牛は潜血と尿蛋白反応があったので、細菌性尿道炎および膀胱炎になっていた可能性が高く、損傷した粘膜に結石がずきずきと刺激を与え激痛を生んでいたのかもしれません。

 ある程度正体がわかりすっきりとした面もあったのですが、わたし(♂)には釈然としない点が一つあります・・・それは「尿道を結晶が通過すると、そんなにハッスルしちゃうほど痛いのか?」ということです。・・・どうなんですか??

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