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戸田克樹のコラム
第234話「どうして太っちゃだめなのさ③」

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2019年5月15日

奄美大島がついに梅雨入りしましたね。九州もそろそろでしょうか。つづく曇天と雨に降られる毎日がそろそろやってきそうです。

肥満気味な牛さんでなかなか発情が来ない場合、よく出会うのがこの卵胞嚢腫です。
本来であれば、黄体形成ホルモンが一気に分泌(=LHサージ)されることで卵胞から卵が放出される排卵が起こります。そのLHサージが不十分、もしくはまったく無い場合、排卵が起こらずにいつまでも卵胞が育ってしまい、こうした水風船のような卵胞嚢腫へと育ってしまうのです。

詳しいメカニズムはいまだ不明な点も多いのですが、体内のホルモンバランスが崩れている、あるいはホルモン感受性(ホルモン物質の作用の受けやすさ)が悪くなっているケースが報告されています。

肥満細胞からは体内のテストステロンをエストロジェンに変える物質も分泌されているので、慢性的にエストロジェンが高い状態が続くせいか?と個人的には考えています。

嚢腫牛と聞くと、「ずっと発情を示している」というイメージがあります。
しかし、実際はそうでもありません。もちろんそのようなケースはありますが、意外にも「発情が来ない」という稟告で出会うことも多々あります。たいてい発情が来ないときは「卵巣静止」だと農家さんも予想しているので、このような時は驚きますね。潜入観は禁物です。

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