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伏見康生のコラム
「NO.110: 緊急?割り込みコラム 〜急性RA警報発令その2〜」

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2010年10月13日

 これまでは年にせいぜい1、2頭という程度の発生だった急性ルーメンアシドーシスですが、今年は7月以降今現在も発生が続き、例年よりも格段に発生率が上昇しています。

 現在このように急性ルーメンアシドーシスが猛威を振るっている背景には、口蹄疫発生以来三ヶ月近く閉鎖されていた家畜市場が7月に再開され、肥育農家さんに大きく月齢の進んだ素牛が導入されたという事実があります。普段から大きな気高系の素牛が多い私たちの管内ですが、7月の市場再開の時には400kgを越す素牛はザラで、中には500kg越えの素牛までいたほどです。
 その結果、2ヶ月、3ヶ月と肥育のスタートが遅れてしまった素牛の遅れを取り戻そうと、体の大きさに合わせてたっぷり飼料を与えたり、中期の餌を飛ばして後期の餌を与えたりということがあったようです。そして大部分の素牛は大丈夫でも、明らかに食べ過ぎてしまった子、ルーメンが対応できなかった子が出てきたと思われます。
 さらに、導入を急いだ結果一度に多くの素牛が入り、一群の頭数が増えてしまったため、部屋の給餌量が増加し、特定の個体だけがどっさり食べてしまうリスクが上がったというケースも考えられます。
 こうして、急性ルーメンアシドーシスの発生率が増加したと思われます。

 現在は市場に出る子牛の月齢も従来通りに戻り、多くの肥育農家さんの導入も落ち着いてきましたが、不思議なことに余波とでも言いますか、いまだに若干の発生が続いています。おそらく、そのときの給餌方法に慣れてしまい本来の自分の給餌方法よりも知らないうちにペースアップしてしまったのかもしれません。

 急性ルーメンアシドーシスの初期症状は呆然佇立、やがて激しい水下痢に変わり、末期には著しい脱水から起立不能に至ります。急性という名にふさわしく、朝、ボサーっとしていた牛が午後には立てなくなっているということも珍しくありません。起立不能牛が助かる可能性は極めて低いです。導入牛の水下痢を発見したら、すぐにでも獣医師を呼んで診てもらってください。

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