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伏見康生のコラム
「NO.109: 緊急?割り込みコラム 〜急性RA警報発令その1〜」

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2010年10月6日

 「10月現在、九州を中心に急性ルーメンアシドーシス警報がでております!7月より警戒を強めてまいりました急性ルーメンアシドーシスですが、同月末には注意報、そして8月からは警報へと変わり、いまなお被害が拡大しております。対象動物はおもに導入三ヶ月以内の肥育素牛となっております。みなさん増飼の際には十分にご注意ください!!」

 ルーメンアシドーシスについては詳しくは桐野有美のコラム9〜11話をご覧ください。一口にルーメンアシドーシスといっても、その病態は慢性急性の大きく二つに分けることができます。桐野先生のコラムで紹介されている内容は、おおよそ慢性ルーメンアシドーシスについてのものです。慢性ルーメンアシドーシスは徐々に徐々に牛の体を蝕み長期的にさまざまな不利益を生じさせます。肥育牛はその飼い方から、ほとんどの牛が潜在的慢性ルーメンアシドーシスといえます。一方、急性ルーメンアシドーシスはその名の通り急速に進行し、重度のアシデミア、脱水そして虚血性ショックを引き起こし大切な牛の命を奪ってしまうことも少なくない極めて危険な疾病です。

 この急性ルーメンアシドーシスは牛が偶発的に濃厚飼料を大量摂取してしまった場合に起こります。
 牛の肥育を行なっていく場合、理想肥育方式であっても短期肥育方式であっても、濃厚飼料は徐々に量を増やし与えていきます。 かりに「うちは導入2ヶ月で濃厚飼料飽食に持っていきますよ〜」というように明らかに追い込みスピードが早い農家さんであっても、ルーメンへの負担は大きいですが、特定の個体の摂取量が急速に増加したりすることがない限り急性ルーメンアシドーシスを発症することはまずありません。
 
 急速に大量摂取された濃厚飼料はルーメンの中ですさまじい勢いで分解発酵し、大きく酸性に傾いたルーメン内へ体中から大量の水分が引き込まれていきます。ルーメンの壁と絨毛、下部消化管はその酸によりぼろぼろにダメージを受け激しい水下痢をし続け、時には激しい血便へと移行します。そして上記のように重度のアシデミア、脱水そして虚血性ショックを引き起こし、起立不能、神経症状、呼吸不全を呈し生命の危機に陥ります。一命を取り留めた場合でもルーメンを始め多くの臓器に大きな障害を後遺し、大きく出遅れることとなります。(つづく)

 まいどのことですが、連載の途中に割り込みが多くて多くて、大変読みにくいコラムになっていますことをお詫び申し上げます。

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