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伏見康生のコラム
「NO.101: 「褐毛和種のお話(9)〜高知系その4〜」」

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2010年8月4日

 褐毛和種について調べていく中で、飼養管理に関して興味を惹かれる情報を見つけましたので、「褐毛和種のお話」の最後に今回はそちらを紹介させていただきたいと思います。

 「生産獣医療システム 肉牛編」の中で日浦千尋先生は褐毛和種高知系の哺育期子牛の飼養管理について、お産直後の子牛との付き合い方が最も肝要であるとし、その具体的な方法として高知県の片岡式学習法を紹介されています。以下はそちらをそのまま抜粋したものです。

片岡式学習法
1)日頃から母牛との信頼関係を深めお産を待つ。作業計画に子牛の学習時間を組む。
2)一回目の子牛学習は分娩直後から8時間以内に行なう。母牛を繋いでから子牛を連れ出す。
3)子牛の胎水を拭き取り愛撫し、少し指を吸わせる。頭絡も着けるが当日は使わない。
4)子牛を誘導方向に向け子牛と離れて誘導する。手をたたいたり、「こいこい」などと優しく呼ぶ。
5)ついてきたら体を愛撫し、200mくらい誘導する。
6)2日目からロープ誘導を組み入れ1週間続ける。
7)あとは、ときどき子牛を連れ出す。

 その後には学習法により得られる成果が紹介され、最後には「牛と対話できることこそ最大の飼養管理の技術であるといって過言でない。」と締めくくられています。

 いきなり一行目から「そこまでは・・・手間もすごいし・・・」と読み流してしまいそうでしたが・・・最後の「牛と対話できること」というところで、はっ、としました。多頭化による一元管理、効率の重視、経済性を基準にした思考に、いつの間にかどっぷりだったみたいな気がします・・・
人と牛の対話の姿勢を忘れず大切にしてきた高知の文化を知り、自分の目指す獣医療の原点を思い出しつつ、「なるほど確かに」と大きくうなずいたところでした。

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