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「和牛への支援と将来展望(出雲普及員のコラム第5弾-8)」

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2018年12月28日

8,農業協同組合
 
 現政権は、「農業は規制改革が遅れている。その元凶は農協にある」ということを頻繁に発信しています。農業の現場にいる人間からすると、「なんか違うなあ」と思ってしまいます。農協があったから、農畜産物の産地が作られその地域の農業が守られてきた背景を、一部の国会議員さんは知らないのではないかと思ってしまいます。産地化、ブランド化は一朝一夕にできるものではありません。北海道でいえば「夕張メロン」や「川西長いも」、「らいでんスイカ」、和牛肉でいえば「みついし牛」などが有名です。

 生産部会や農協が協力し合い、まずは消費者に喜ばれる高品質のものを生産者が作り、厳しい品質基準をクリアーした生産物を農協が集荷し、有利販売できるように商流開拓した結果、今の産地が出来上がっているのです。農家個々だけの努力では無理です。農協の尽力があったから実現できたことであることを、現場を見てきた私はよく知っています。もちろん、生産者の努力が欠かせないことであることは、言うまでもありません。

 誰かを悪者にすることで自分を良く見せる、という手法は色んな場面で用いられてきました。農業の現場を知らない一般市民は、ヒール役(農協)とそれを懲らしめる委員さん(規制改革推進会議)の登場で、溜飲を下げたことでしょう。

 農業資材は、ホームセンターなどで購入したほうが安く買えるかもしれません。でも、そういう店舗は売りっぱなしです。農協には営農指導部門があり、機能の度合いは農協によって様々ですが、関係機関と連携しながら、減農薬や効率的な資材の使用などについてアドバイスする機能を有しています。営農指導は人的資源を投入しながら、その部門から収益が産まれるわけではありません。農協全体として、その費用負担をする必要があります。もちろん農協も企業努力で、出来るだけ安価に資材提供する努力は必要でしょう。現代にあった農協組織の見直しは、当然求められています。良いところは残し、ダメなところは変えていくことが大事で、解体してしまえという暴論は、農業の現場を知らない人のマスコミ受けを狙ったパフォーマンスに思えて仕方ありません。


農協有の集出荷施設で糖度を図るなどの選果をしています

つづく

技術士(農業/畜産) 出雲将之
 
 
~ 出雲普及員のコラムシリーズ ~

出雲普及員のコラム第1弾「幸せな牛飼いとなるための10カ条-1

出雲普及員のコラム第2弾「厳しい時こそ「カイゼン」のチャンス-1

出雲普及員のコラム第3弾「牛さんの気持ちになって考える

出雲普及員のコラム第4弾「牛さんとわたし
 
 

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