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松本大策のコラム
「骨軟症のお話 その5 繁殖牛と骨軟症」

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2006年10月13日


 骨軟症が問題となるのは肥育牛だけではありません。繁殖母牛にとっても大きな問題となることがあります。
 骨軟症の個体は、カルシウムの代謝が悪いものが多いのですが、カルシウムは筋肉の収縮の際にとても重要な働きをするミネラルです。筋肉といえば体を動かす骨格筋や心臓の横紋筋が頭に浮かびますが、胃袋や腸、子宮や卵管なども平滑筋という種類の筋肉です。ですからカルシウムの代謝が悪くなると骨格筋の痙攣が出たり、重症例になると心臓の筋肉が痙攣して死んでしまったりするのですが、他にも胃腸の動きが悪くなって食欲が低下する、という症状も出やすいのです。
 同じように子宮や卵管も平滑筋ですから、骨軟症で血液中や筋肉中のカルシウムが不足すると正常な収縮ができなくなってしまいます。そうなると、分娩後の汚露の排出が悪くなって子宮の回復が遅れたり、卵巣から産まれた卵を子宮に運ぶ卵管の働きが低下して受胎率が落ちることもあります。また産前産後の起立不能も出やすくなるのです。
 繁殖母牛でも足の状態や歩き方には十分注意を払ってあげましょう。1つの目安として、骨軟症の母牛が多い農場では、春先と秋口の受胎率が低い傾向にあります。これはおそらく、日中の明るい時間の長さとビタミンDやカルシウムの調整をするホルモンの分泌とが関連しているからではないかと考えています。肥育牛でも春先と秋口に骨軟症が増えるんですよ。
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