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松本大策のコラム
もう一度適正な抗生物質使用について考える

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2018年6月1日

 松本です。全国を回っていると、抗生物質の使用についてさまざまな誤解があることに気づかされます。

 最も多いのが「ミコチルは最終兵器だから最後に使わないといけない」とか「ミコチルを使うと、他の抗生物質は効かなくなってしまう」といったものです。ミコチルの開発目的を知っていれば、こんな誤解は起こらないと思うのですが、ミコチルは「予防薬」的な目的で開発されたもので、通常の抗生物質のように細菌やマイコプラズマの駆逐も目的の一つですが、もう一つ大切な働きとして「肺炎の悪化を食い止める」2つの働きがあるのです…。ですから、すっかり悪化させてから使うよりも、最初に使った方が効果が上がります。

 以前、三重県でやった試験では、ミコチルを市場で打ってから移動した牛さんと、移動後に自分の牧場で打った牛さんでは、移動前に打った方が肺炎の防止効果が高かった、というデータもあります。共済保険ではそのような使い方というか、そもそも「予防」に対しての給付はありませんから、当然自腹です。でもそれだけの効果はあるし、最後に打ってもコストが高いだけでそこまでの効果は期待できないでしょう。

 他には、間隔を詰めて使用した方が効果が高い抗生物質(ペニシリンの仲間やフロロコールの仲間、マクロライド系といわれる仲間などです)と、1回の使用量が多い方が効果がある抗生物質(ニューキノロンとかテトラサイクリン系、アミノグリコシド系など)を分けて考えなければなりません。

 それから、共済保険は国の保険制度ですから当然制約はありますが、以前(5月18日)書いたように「混合診療」が出来ます。同じ部屋の牛で、ペニシリンが効かず、OTCが効かず、ニューキノロンがとても効いた、となれば、その部屋で次に発症した牛さんには、第一選択としてニューキノロンを使うべきです。しかし保険適用は出来ませんから、自腹で打っていただけば良いのです。ここは農家さんのコスト感覚を磨きましょう。

 
 
 
 
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