(有)シェパード[中央家畜診療所]がおくる松本大策のサイト
松本大策のコラム
夏場の受胎率を保つ

コラム一覧に戻る

2018年5月28日

 なんか、この頃寒暖差が激しいですね。日々トランク抱えて出張の日々、着るものの選択に困ります。先日も大阪方面にでかけて最初は暑い日が続いたのに、そのあとすごく寒いのにTシャツしかもってなくて、季節外れの風邪を引いてしまいました。子牛たちも辛いでしょうね。

 しかし、おそらく梅雨が明けると、今年もものすごく暑い日が続くのでしょう。気温の高い時期は、どうしても受胎率が低下します。一つは、「精子」が高温に弱いことが原因です。夏場の受胎率低下は、かえってETの方が少ないくらいです。受精卵になってしまうと高温にも強くなるんですね。

 もう一つは、お母さん牛が夏バテで、繁殖どころじゃなくなること。というと変な言い方ですが、前回も書いたとおり、気温が高くなるとお母さん牛の体内の温度も上昇します。肝臓の酵素などの働きは、牛さんの体温に合わせて最適になっているので、その温度が上昇すると、ホルモンの材料であるLDLコレステロールが上手く作られなかったり、使用済みホルモンの分解が上手くいかなかったりで、ホルモンのバランスが崩れてしまいます。

 それから環境の温度が高すぎたり低すぎたりすると、ビタミンAが破壊されたり、たくさん使われたりして、ビタミンA不足になります。それに、ストレスで「活性酸素」が身体でたくさん発生したり、油分を含んだエサが酸化して「過酸化脂質」がたくさんできて、これが体調全般、特に今回のお話しに関係する部分では、排卵や黄体形成がうまく出来なくなります。

 そこで、対策として梅雨が明ける頃に(早めがいいです)、ビタミンADE剤とパントテン酸(強肝剤ですが全身の細胞を活性化する働きもあります)の含まれるお薬を与えるのは効果があります。できれば、ビタミンE注10ml+ゼノビタン(ビタミンADEの注射)5ml+パンカル注10mlの皮下注射をお勧めしているのですが、注射が難しい場合は、ビタラップ63を20mlずつ1週間間隔で2~3回飲ませて、リカバリーMのようなパントテン酸カルシウムを含む添加剤を(リカバリーMの場合は100g×3~5日)飼料添加します。これで、お母さん側の不安要素はかなり減らすことが出来ます。

 精子の問題は、お母さんの膣から子宮に入ってからの高温が問題ですから、僕は、発情が来て授精してもらう前、20分から1時間、お母さん牛に冷水をかけて体温を下げてあげてから授精してもらうようにお勧めしています。いきなり全身にかけると心配なので、後頭部にかけて徐々に後ろの方まで冷やしてあげましょう。きっと受胎率は上がるはずですよ。あ、水をかけたら、涼しいところで拭き上げて下さいね。水をそのままにしておくと、断熱剤になって、再び体温は高くなってしまいますよ。
 
 
 
 
- - - - - - - - - - - - - - - - - -
求人のご案内
有限会社シェパードでは、獣医師を募集しています。一度実習に来てみませんか?募集内容はこちらからご確認ください。

中国物産株式会社では、牛用飼料販売の営業員を募集しています。会社見学大歓迎です。募集内容はこちらからご確認ください。

|