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伏見康生のコラム
「NO.28: 「中耳炎とその治療(15)」」

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2009年2月21日

治療5 中耳炎 其の一
 今回からは中耳炎の治療になります。しつこいようですが、外耳炎と中耳炎は治療法が異なるため鑑別して治療を行わなくてはいけません。二者の確定診断を下すためにはCTを用いた画像診断が必要ですが、当然現実的な方法ではありません。そこで私は第20回にも書いてあるように顔面神経麻痺が起こった時点で中耳炎と診断し鼓膜穿刺をするようにしています。そこに斜径が加われば鉄板ですが、その状態から治療に入るのは遅すぎます。また注意していただきたいのは、よく中耳炎と思われがちな症状である「風邪症状、耳垂れ、耳からの排膿」の三点セットの多くは中耳炎ではなく外耳炎であるということです。外耳炎であった場合はもちろん前回までに紹介した治療法で良好に治ります。
 前述のように中耳炎の治療は外耳炎に共通するところが多いです。唯一の違いは下記の(2)にある鼓膜穿刺・膿吸引です。この治療の主眼は、「中耳炎の原因となっている膿を積極的に除去する、あるいは除去しやすい状態にすること」にあります。というのも、外耳炎と異なり中耳炎では鼓膜の奥(鼓室、鼓室包)に膿が溜まるため、単純な洗浄ではまったく膿が出てこないのです。そこで鼓膜穿刺をして鼓膜を破ることで吸引による膿の直接除去ができ、その後は耳道薬注・洗浄をすることで排膿をさせることができるようになります。また、たまに鼓膜がすでに破れている子もいますが、その場合においても膿塊への穿刺と吸引は病状のいち早い回復にとても有効です。

中耳炎治療の流れ
(1)耳毛切り・清拭
(2)鼓膜穿刺・膿吸引
(3)耳道薬注・洗浄
(4)抗生物質、消炎剤の注射

鼓膜穿刺・膿吸引の詳しい方法は次回。

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