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伏見康生のコラム
「NO.27: 「中耳炎とその治療(14)」」

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2009年2月14日

治療4 外耳炎 其の四
(3)抗生物質、消炎剤の注射
 外耳炎の牛を診察していると、その半数以上が風邪等の上気道感染を持っていることに気がつきます。というよりもむしろ、「風邪をひいている」ということで往診の依頼を受けて、診察してみるとそこで外耳炎に気がつく、といったケースがほとんどです。私は上気道感染と外耳炎にはとても密接な関係があると考えています。よって外耳炎の治療の一環として、風邪などを罹患している牛には抗生物質(二次感染予防の意もこめて)と消炎剤の注射をします。

余談:なんだ、風邪が外耳炎の原因なの?第25回で書いてあるように高い湿度と換気の悪さから菌が感染して炎症が起こるんじゃなかったの?耳毛を切って清潔にして洗えば治るんじゃなかったの??と言われそうですね(汗)。確かに教科書的には高い湿度と換気の悪さを原因として書いてあるものが殆どだと思いますし、私自身も外耳炎と風邪の関係について書かれているものは見たことがありません。しかし、どうしても上気道感染と外耳炎が関連しているように思えて仕方ありません。ヒトでは上気道感染やアレルギーの症状で鼻水がよくでます。これは炎症物質によって分泌が促されるのですが、牛の場合、私はその二者に加えて外耳道からの分泌も著しく亢進し、それが外耳炎の原因になると考えています。だって、耳から膿を出しているようなヒトには会ったことないけど、牛だったら珍しくないじゃないですか!!きっと耳の分泌線の数とか感受性とか全然違うんです!!(・・・と信じています)
 私が考える上気道感染から外耳炎への流れは以下のとおりです。上気道感染の炎症物質に反応して牛の外耳道もまた炎症を起こし、多量の分泌物が出ます。外耳道には脂腺が多く分布するため、分泌物は浸出液や古い角質等と混ざって粘稠性の高い耳垢となります。その高い粘稠性ゆえになかなか耳垢は耳道から外界へ排出はされません。さらに、牛の耳の構造と耳毛の長さから換気は悪く、湿潤な環境が保たれるため、菌にとっては格好の増殖場所となります。増殖した菌と生体は戦うこととなり、炎症が進みます。こうして膿ができ、炎症の連鎖がぐるぐる回り始めます。
 よって、原因治療のためには上気道感染の炎症を抑える、即ち、抗生物質と消炎剤を注射して外耳道からの分泌を抑えることが肝要であると考えています。

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