症状各論5 顔面神経麻痺 其の二
Ⅰ)耳介下垂
この症状は外耳炎でも見られます。診断のポイントとして水平よりも垂れた耳、音に反応して耳が動かない(鼓膜が障害されている可能性も)、ヒトが耳や耳票を触っても自力で耳をパタパタ動かせない(あるいは微弱)といったことがあげられます。
Ⅱ)眼瞼麻痺
眼瞼麻痺とはまぶたの麻痺のことを指します。眼瞼麻痺が起こるとまぶたはど〜んと腫れぼったくなり明らかに形相が変わります。ちょっと目つきの悪い愛しにくい顔の子牛になります(笑)(写真)。この腫れを見つけたら眼球を指で(清潔な)チョンと触れてみてください。あるいは指を眼球にすばやく近づけて威嚇してもいいです。このとき牛がまぶたをうまく閉じることができなければ顔面神経麻痺です。まぶたを閉じることができればその他の理由(脱水、エンドトキシン、マイコトキシンなど)であると考えられます。
余談:細かいことですが動物にはヒトには無い第三のまぶたがあり、目をとじるときにカメラのシャッターのように横(眼球と普通のまぶたの間)からシャッと出てきます。正常な牛では見ることなど殆どありませんのでその存在すらあまり知られてないかもしれませんが、顔面神経麻痺ではこの第三のまぶただけは動くことがあります。眼球を威嚇するとこのピンク色の第三のまぶただけがちらちらと眼球の表面に出てくるのを見ることができるかもしれません。これは威嚇刺激に対して、眼瞼の運動を支配する神経(顔面神経)は麻痺を起こしているのですが、感覚を支配する神経(三叉神経)は正常に働いているという事を示しており、この症状が中枢(脳)の障害ではないことを示す根拠となります。
口唇麻痺は次回。