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伏見康生のコラム
「NO.20: 「中耳炎とその治療(7)」」

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2008年12月20日

症状各論4 顔面神経麻痺 其の一
 写真のような子牛を見たことは無いでしょうか??これは中耳炎により顔面神経麻痺を起こしている子牛の写真です。中耳に近接して走行する神経の一つに顔面神経があります。中耳炎による炎症が顔面神経へと波及すると、Ⅰ)耳介の下垂、Ⅱ)眼瞼の麻痺、Ⅲ)口唇の麻痺といった顔面神経麻痺の症状が現れます。
 前回までにとり上げてきた耳垂れや排膿などの症状は「中耳炎にだけ見られるもの」とは言えなかったのですが、今回お話しする顔面神経麻痺は大きな外傷や特殊なケース(※)による場合を除いて、かなりの確率で中耳炎が原因で起こります!!つまり顔面神経麻痺の発見が、即、中耳炎の発見となるわけです。(※)特殊なケースとして一番現場で出会う可能性が高いのはヘモフィルス症の伝染性血栓塞栓性髄膜脳脊髄炎≒脳梗塞によって起こる半身麻痺です。こちらは顔面神経のみならず手足も麻痺しますので区別は簡単です。

 余談:犬猫のような小動物では中耳炎によるもっとも特徴的な症状のひとつとして“ホルネル症候群”があります。ホルネル症候群には左右の瞳孔のサイズが違くなるという本当に特徴的な症状があります。これは中耳を走っている神経のひとつである交感神経節後線維が傷害されるために起こります。しかしこの症状は牛や馬などの大動物の中耳炎では見られません!!!とってもわかりやすい症状なのに〜!!!

 次回、もう少し詳しく顔面神経麻痺の各症状を掘り下げていこうと思います(細かすぎですが・・・)。

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