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伏見康生のコラム
「NO.19 「中耳炎とその治療(6)」」

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2008年12月13日

症状各論3 耳からの排膿
 3つ目の症状は耳からの排膿です。耳を垂らしている牛の中で、写真のように耳が汚ない牛を見つけることがあります。この耳からの排膿も中耳炎の大事な症状の一つです。第15回で掲載したCT画像に示しているように、中耳炎では中耳に膿がたまるため、炎症が進んで鼓膜を突破すると耳から排膿が見られることになります。鼓膜を突破するほどに進行した中耳炎では炎症はとても強いため、次回紹介する顔面神経麻痺を起こしていることが多いです。では、耳垂れと耳からの排膿を見つけたら即中耳炎かといえばそうではなく、鑑別が必要な疾病として外耳炎があります。外耳炎は耳から細菌が感染して外耳道(耳かきするところ)に炎症が起こった状態です。人間は清潔な環境にいる上、換気されやすい耳の構造(毛が少なく、耳道が短く、耳介が空気の流れを邪魔しにくい)をしているため、外耳炎の発生はそれほど多くはありませんが、動物での外耳炎の発生は少なくありません。耳が垂れているタイプの犬なんかでは、必発ともいえるくらいです。中耳炎と比べ外耳炎は熱もさほど高くなく、牛に及ぼす影響もそんなに大きくありません。進行すればやがて中耳炎に発展することもありますが、こまめに耳道洗浄をしてあげれば問題なく治癒していきます。  
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