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伏見康生のコラム
「NO.17: 「中耳炎とその治療(4)」」

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2008年11月29日

 中耳炎の治療を行うにはまず診断が必要です。そこで今回からは、中耳炎に特徴的な症状の各論について書いていこうと思います。

症状各論1 耳介下垂
 「あの子牛、中耳炎じゃなかろうか?」と最初に疑うのは、やはりなんといってもそのだら〜んと垂れた耳を見つけたときです。この発見はさほど難しいものではなく、子牛の顔をよく見ている人なら簡単に気がつくと思います。中耳炎の起こっている側と同じ側の耳が、水平よりも下に垂れ下がります(写真)。ほかの子牛と比較すれば一目瞭然です。すぐに捕獲しましょう(笑)!!捕まえて耳を触ってみると、子牛は耳を殆ど自力で動かせないことに気がつきます(後述しますが、耳介を支配する顔面神経の一部がすでに障害されているためです)。耳の付け根は熱を持っていることも多いです。片方だけ耳が下がっている子はまず下がっている側の耳に中耳炎(あるいは外耳炎)が起こっていると考えて間違いないでしょう(経験上ですが・・・)。ところが両方下がっている子は、その症状だけで中耳炎と決め付けてしまうのはちょっと危険です。というのも子牛たちは肺炎などにより熱が上がるだけでも耳を下げている子が見られるためです。早期に鼓膜穿刺などの積極的な治療を行うことが良好な成果を得るのは間違いないのですが、「耳垂れだ!!早く中耳炎を治してやろう!!」と意気込んで、中耳炎じゃない子牛の鼓膜を破ってはかわいそうですもんね(泣)。

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