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伏見康生のコラム
「NO.8: 「注射をしよう!!!2−2」」

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2008年9月27日

 今回は前回のコラムの中にも出てきた「肩甲骨と脛胸部周囲皮膚の伸びの魅力」について書きたいと思います。実は同部位は皮下への大量補液にとても有効なのです!!皮下補液は牛への水分と電解質の安全な補給経路となります。皮下補液には大きく二つのメリットがあります。

其の一:安全性
皮下補液は血流への移行が緩徐であり、また投与した液量すべてが直で細胞外液(主に血液)に移行するわけではなく、多くが細胞内液として補充されるため、心肺機能にかかる負担がとても穏やかで安全です。高熱や衰弱から心機能が低下していたり、肺炎を持っている子牛では、急速輸液で肺水腫(肺に水が漏れ出しておぼれてしまうこと)に陥るリスクが高まります。そのような子牛に対する水和状態の改善には(速効性静脈輸液には劣るものの)特に有効であると考えられます。その吸収速度は乾いた地面には勢いよく水が吸収されるが湿った土ではあまり吸収されないように、牛の水和状態によって、ちょうどよく加減されるため軽度の脱水状態では維持輸液となり、重度脱水では細胞内液、外液にバランスよく水分が補給されます。

其の二:簡便さ
皮下輸液は、ぷすっと輸液管と連結した針を皮下に刺せば準備は完了。後は輸液バッグを絞ってどんどん流してあげるだけ。投与速度など気にせずに、1ヶ月齢くらいの子牛でも、右肩に1リットル、左肩に1リットルをど〜んと5分くらいの超短時間で入れてあげることができます(静脈ならひっくり返っちゃいそうです)。点滴のように何十分もついていてあげる必要も、ほかの子に引き抜かれないように隔離したり、接着剤で留めたりする必要もありません。もちろん子牛にとっても長時間保定されたままで補液されるよりはずっと快適だと思われます。

其の三(番外編)??:ビジュアル
両肩に1リットルづつも投与すれば、わずか5分にして飼い主にも「おやっ!!?」と思わせるほど肩に乗った(肩の肉付きがよいという意味)子牛が出来上がります(笑)

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