さて、長靴、手指、体温計の洗浄を終えて・・・いよいよ診療か!!?
「こんにちは〜(無駄に大声)」 今日の治療牛は桐野先生の継続であの子か〜 目的のマスまで、他の牛たちの部屋をまたぎ・・・柵を飛び越え着地・・・ 牛が座ってる!!捕まえるチャーンス!!“ばっ” あっ!聴診器忘れた!! “ドタドタ・・・”
「コラっ!!!牛舎を走るなっ(怒)!!!」「ひぃっ!!!は、はい・・・」、、怒られました・・・。怒られたのは走ったことだけですが、この中にはまだ間違いが沢山あり、全部怒られたことがあります(泣)。
農家さんに怒られているのは、治療牛や治療に関係ないリラックスして二度噛みしている牛まで驚かせてしまっていること。大声や柵の飛び越え、牛への飛びかかりは言うまでもなく、そろ〜りとマスに入るだけでも多くの牛は二度噛みをそれこそ“ピタッ”とやめ、横目でこちらをじーっと観察し、かなりドキドキしています。牛を驚かせてはストレスをかけてしまうばかりか、興奮させて思わぬ事故にもつながりかねません。牛歩など万歩計のついている生産農家さんや酪農家さんではデータはもう・・・
人間が近づく以上、まったく牛を驚かせないということは不可能に近いのですが、最小限にとどめることはしなくてはいけません。一年ほど前、種子島の酪農家さんで実習をさせてもらっていたとき、そこの場長さんは「治療したい牛だけに合図を送って気づかせてやるんだ」といって、100頭近くいるフリーストールの牛舎から目的の一頭だけ連れてきて、度肝を抜かされたことがあります!!!
先生には捕まえ方に関して、また別の視点から指摘を受けました。それは、診察も捕まえる前から始まっているということです。牛を驚かせずにそろりと目的のマスに入り、座っている牛をゆっくりと自分の意思で起きあがらせ“起きかた”、“伸び”の有無を見ます。この起きるというわずかな動作だけでも牛の四肢やその関節、全身の健康状態を伺い知ることができます。健康で気分のいい牛は必ずといっていいほど“伸び”をしてくれますし、具合のよくない牛は起きることさえ億劫になります。飛びかかって捕まえては牛の観察ができないばかりか、興奮と緊張で本当の病態を隠してしまいその後の診察、治療にも影響してくるんです。